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パラレルがたくさん書きたいなー、ということで書いた。
孫、明治初期地方農村怪奇パラレル、紅×昌、688文字。

 この世でいっとう明るい星はなあに、と無邪気に問うてくる瞳はきらめきに満ちていて、紅蓮は束の間、言の葉を失した。
 重たく堅い樫でできた格子の向こうで、昌浩は星図を手に笑っている。細い肩にかけられた色無地の袷が秋の風に揺れて、畳に滑り落ちた。わだかまる鶯色が、思いもかけず長い影を引く。夏の面影を僅かばかり残した夕日が座敷を這い上り、彼の日に焼けぬ白い肌を茜色に染め上げた。
 檻から出ることを知らぬ少年は、切り取られた空しか知らぬ。
 物心ついた頃からこの離れに閉じ込められている子どもを紅蓮が知ることとなったのは、ごく最近のことだ。村人の大半は彼のことを知らない。知らないまま、彼を搾取し続けている。
 昌浩は囚われたまま、逃げようともしない。
 紅蓮はその訳を知っている。いつでも鎖を断ち切り、座敷牢の形を成していないこの場所を出ることのできる彼が、何を想い、何を考えてそうしているのかを。
 もし、彼が真実虜囚であったなら。おそらく、紅蓮は悩むことなどなかったのだろう。
 しかし、紅蓮は告白を聞いた。聞いてしまったから、動けなくなった。
「……いちばん明るいのは、明星だ。朝と夕に、東と西の際に出る」
 昌浩は少し首を傾け、口の中で、ひがし、と呟いた。それから広げた星図の皺を伸ばす。癖のついた紙がそれで直るわけもなく、星図はほんの少し曲がったまま床に置かれた。
 紅蓮より三つ年下の少年は、緋色に染まった和紙から目を背けて、格子の向こう、高い石塀を見つめた。
「じゃあ、俺には見えないや」
 淡泊な声音だった。
 すっかり興味の失せたような顔で、昌浩は紅蓮に微笑んだ。

 ――この、狭い檻を囲む柵は、とてつもなく高い。





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てことで、2008/09/30の日記に書いた農村怪奇パラレル設定ちょっと書いてみました。……いつかオフで出したいなあ……
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