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リハビリがてらSSを書いてみるよ。
オリジナル、1190文字。





 「あんたたち、一緒に寝ないの」と聞かれて、あたしは彼女を見上げた。
 その子の視線の先には、もう長い間付き合っている男がいる。あたしがほんの小娘の頃に出会った男だ。
 短い毛先をちょっといじってから、あたしはぼそぼそと答えた。
「そんなんじゃないのよ」
「仲は悪くないでしょ」
 だからって、それが理由にはならないのよ。
 この子とは中学に上がったあたりから知り合っているけど、互いに考えていることはよくわかっていない。まるで別々の世界に住んでいるみたいに、話が通じない。どうしたらいいのかしらね、と何回か呟いたけど、その呟きさえ、彼女は知らんぷりしてしまう。
 ふたりともお喋りな性質ではないから、結局、会話らしい会話も少ない。それでますます相手がわからなくなる。
 けど、会うことはやめられない。
 あたしがアスファルトの上にべたりと座り込んでいると、遠くから歩いてきた彼女があたしを呼ぶ。
 「えーちゃん、」嬉しそうな声に、あたしも笑う。「なあに、」言って駆け出せば、彼女も足を速めてくれる。あたしを出迎えて、彼女はにこにこと微笑む。
 言葉が噛み合わなくてもいいや、と確信する瞬間。
 だから、この子はあたしの友達なのだ。
 ――でも、やっぱり、会話が成立しないことにうんざりする時があるのも事実。
 あたしは陽だまりの中で気持ちよさそうに丸まっているあいつを眺めて、声を潜めた。
「くっついてはないけど、近くで寝てるのはあんたも知ってるでしょ。あれじゃあんたは不満なワケ?」
「……えーちゃん、あいつが男だから嫌なの?」
「え」
 あたしはぎょっとして彼女の膝に爪を立てた。彼女は表情を変えないまま、「いーたーいーよ」と声だけは心底嫌そうにしてあたしの手を撫でた。自分では止められない無意識の癖をまた咎められて、あたしは俯いた。
「嫌じゃないよ。それにあいつ、オカマだし」
「あんた女好きだもんね。カキツバタの先生に言い寄られてたけど逃げてたっけ」
「でかい男は趣味じゃないのよ」
「ならさあ、なんであいつと一緒に寝てあげないの。怖いことされないよ? きっと大丈夫だよ」
 かもしれない。
 けど――たぶん、この子が思ってるような関係に、あたしとあいつはなれないだろう。
 その時期は、ずっと昔に過ぎ去ったものだから。
 そんなことをぽつぽつ零していると、彼女は少し黙ってから、ふうん、と唸るように相鎚を打った。
「まあ、あんたの好きにするのが一番だけどさ」
 ……じゃあ最初から振ってくるな。
 ため息をついて、あたしは彼女の狭い膝の上で立ち上がった。お尻が彼女の顔に向く。獣くっさ、と声が上がるのに笑って、尻尾で頬をくすぐってやった。それからまたくるんと丸まって、喉を鳴らす。
 薄目を開けると、彼女はまんざらでもない顔をしていた。
 今度は前触れなくくしゃみをしてやろうかな。思案して瞼を落とすと、緩やかな闇が視界を閉ざした。
 駐輪場、季節は春。もうすぐ電車がやってくる。





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ちうわけでぬこの話でした。会話してるようで実はしてない一人と一匹。
実在の人物・団体には一切関係ありませんよ。……おそらく。

 

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