ちなみに安倍さんちの構造がうろ覚えだったのでアニメ化したときに豆Aについてきた小雑誌やら、ザビに載ってた見取り図などで確認とっております。昌浩やじい様、彰子さん、吉昌&露樹さんの部屋は対屋扱いでいいのか? 渡殿ないけどあの家。あと廂がない(母屋と一続き状態?)、でファイナルアンサーなんでしょうか。外側から順に見ると高欄→簀子→蔀戸+白壁+妻戸→母屋、ていう順番で本当にいいんだろうか……。
あと原作だとほぼ一切触れられてないけど、あの家、ちゃんと召使いいるんだぜ……?(1巻39頁参照)数人って表記だが。あと女房はいないらしい。女童(めのわらわ)か下人辺りかしら。ていうかドリーム書いてる人はこんな美味しい役どころが公式で転がってるんだから使えばいいと思うよ。その召使さんたちが寝泊まりしてるのは屋敷北側、畑の南です。設定資料を見ろ、小屋が2軒立っているぞ!
ミト様のあからさまな死亡フラグ
ヘタレな一面が顕になり逆に生存フラグの立ったレオドリス
もうほんと怖いなんなのこの漫画
そしてそれとまったく逆にギャグやってる清杉とBBBに土塚てんてーの正気を疑います
なんというバイタリティ…!
前回更新日からちょうど一ヶ月ですね……別に狙ったわけじゃないんですが。
しかし今回更新の前半部分、(3)に付け足しとけばよかった……6000文字以上とかなげえよ……
紅昌予定で執筆してるのに何故か幼女とフラグが立っている不思議。
人界が夕闇に包まれても、異界の空は灰色のまま変わらない。代わり映えのしないどんよりとした曇り空と荒廃した大地に帰ってきた紅蓮は、否応なしに甦ってくる感触を振り払うように、きつく拳を握りしめた。
あれは人ではない。
昌浩自身がそう言っているではないか。
だというのに、身体は頭と裏腹に、刻まれた記憶を再生して紅蓮に訴えかけている。
彼の隣に立ったとき、はたしてあの存在を妖扱いすることができるのか、と。
純粋な天狐でもなく、純粋な妖でもなく、人間でもないのなら、では昌浩という生命は何に属しているのだろう。
中途半端な存在のくせにどこまでも無防備な彼の態度が、紅蓮の心に爪を立てている。
彼をどう扱ったらいいのか、紅蓮にはまるでわからなかった。
暗澹とした心のままにきびすを返した、その時。かけられた馴染み深い声に紅蓮は顔をしかめた。
「珍しいな、騰蛇」
「……勾」
「お前が私と晴明以外にあれだけ会話をするとは思わなかった」
無言のまま発せられる怒気を、紅蓮と同じく凶将である勾陳は涼しい顔で受け流した。十二神将最強の騰蛇が唯一背を預けられる闘将二番手は、他の同胞と違って彼に畏れを抱くことはない。心安い仲間の一人だった。
「そう不機嫌になるな。気を悪くしたらすまない」
切り揃えられた黒髪を揺らして現れた彼女は、先ほどの一連のやりとりを全て見ていたようだった。
含みのある笑みをたたえて、彼女は腕を組んだ。
「私もあれに興味があったし――何より、お前があれに話しかけるとは思わなかったのでな」
「……ふん」
何故かばつの悪い気分で、紅蓮は勾陳に構わず荒野を歩き出した。勾陳がごく自然にその背を追う。だが隣に並ぶことはせず、彼女は紅蓮の背を黙って見つめていた。
やや時間をおいてから朱唇が開き、物言わぬ紅蓮に言葉がぶつけられた。
「晴明は平気なくせに、あれは駄目なのか」
「あいつは俺たちの主だ。……俺が認めた男だ」
「それなら、」
勾陳は頭一つ分高い戦友の後ろ頭に、刃のような眼光を据えた。
「あれは認めぬに値しない男か?」
「――なんだと?」
「お前が何を悩んでいるのかは知らんが、あれの問題はお前には関係ないと思うぞ」
紅蓮が足を止めて振り返る。と、彼女は紅蓮が思っていたよりもずっと真摯な眼差しをしていた。
「私はそう感じた」
勾陳の考えが読めずに金眼を細めると、彼女は唐突にふっと表情を和らげた。
「……いや、これはいらぬ世話かな」
「気になるだろう。最後まで言え」
「お前のためにならないと言っているんだ。少しは察しろ」
ひらひらと手を振って背が向けられる。紅蓮がむっとしているのに気づいているだろうに、勾陳はおかまいなしだった。
「なんにせよ、全てはお前の心一つでいくらでも変貌するということだ。ではな」
女性にしては広めの背中が霞んだかと思うと、眼前から消滅する。
言いたいだけ言ってさっさと人界に戻っていった勾陳に舌打ちして、紅蓮は苦々しく地面を睨みつけた。
勾陳の言いたいことはわかる。それがわからないほど幼くはない。
しかし頭で理解することと、感情で納得することは別問題だ。
寒々しい異界で一人、紅蓮は砂地を挑むように睨みつけた。
――あの子どもの、怯えを見せない態度は。
天狐だからなのだろうか。
それとも、もし彼が真実人であったら――その時も、同じように接してくれるのだろうか。
答えは出ない。
出るはずもなかった。
◆◆◆
六合を捕まえられずに陽の落ちた人界に戻ってきた太陰は、おやと耳をそばだてた。
微かな話し声が風に乗って届く。他の神将たちでも聞き取ることのできない微弱な音を、風将の彼女は聞き取ることができた。普段なら聞き咎める事などなく風を離しておしまいにするところだが、今日は逆に風を辿ってみる。
なぜなら、話し声は耳慣れない主だったからだ。
風読みと呼ばれるこの業はあまり得意ではないのだが、相棒の白虎からはもっと精進しろと叱られている。かといって練習台を適当に見繕う訳にもいかない、盗み聞きになるからだ。
人間の会話など神族に連なる彼女にはたいして意味を持たないが、むやみやたらに覗くのはさすがに気が咎める。それに風読みが得意なのは白虎の方だ。ならば白虎にやらせればいいという考えと相まって、太陰はあまり練習をしてこなかった。
なのだが珍しく向上心を発揮してみたのは、声の発信源が敷地ぎりぎりなのと、人数が多かったのがある。興味を惹かれたのはもちろんだが、彼女たちの主安倍晴明は現在安静の身だ。晴明の身を守るためなら、十二神将たちはいくらだって過敏になれる。
空中に静止して神気を集中する。風を手繰り寄せて振動を増幅させる。すると雑音混じりの音声と対象の輪郭が風を通して伝わってくる。やけに捕まえにくいのは、何かに妨害されているのか。
それでも諦めずに集中を続けていると、やがて聞き取れる範囲が広くなってきた。切れ切れの声が連続して聞こえるようになる。どうやら複数人が会話しているようだった。
「……まえはもう………の格好は…いのか」
「……要ないから……そうだ。お前たち、晴明や…………話すんじゃないぞ……怒るからな」
「へ?……んでだ?」
「晴明の………いる……に話してないのか?」
「つべこべ………内緒に…………か、絶対言うなよ、言ったら本当に怒るからな」
次の瞬間、声の主がはっと息を呑んだ。途端に神気を通していた風がぐちゃぐちゃにかき混ぜられる。もちろん風読みはできない。
(気づかれた?!)
驚きで集中を失する。だが太陰は感じ取っていた。
霊力の発露から感じたその居場所。声の主の正体。
南側の築地塀に彼がいる。
瞬間、旋風を巻き起こして太陰は飛んだ。長い距離を瞬く間に移動する。太陰の速さに彼は対応しきれず、身を隠し損ねて晒していた。
――昌浩。
太陰の傷を癒した天狐が、築地塀に腰を下ろして瞠目していた。
「……あんた」
ばつが悪そうに彼がそっぽを向く。ぶらぶらと足を揺らして、視線を逸らしたまま彼は尋ねた。
「趣味が悪いよ。どこから聞いてたのさ」
「あんたが誰かに、内緒にしろとか怒るぞとか言ってるのしかわからなかったわ」
「……そっか、」昌浩はちらりと太陰を見やる。
「なんなのか聞かないのか?」
「誰にだって他人に言いたくないことの一つや二つあるもんでしょ。それに、あんたには貸しがあるしね」
肩を竦めてから太陰は築地塀の向こうを覗き込んだ。
「ところで、あんたが話してた連中は?」
言った次の瞬間、眼前に丸っこい物体がぴょいんと跳ねて、思わず太陰は体勢を崩しかけた。
「よっ、式神ー」
「久しぶりだな!」
「……雑鬼たちじゃない」
彰子姫が一年ほど前に安倍の邸に居を移してから、この敷地には晴明の強固な結界が常に張られ続けている。それまで大陰陽師の邸には低級な妖、いわゆる雑鬼と呼ばれる物の怪の類が入り込み放題となっていた。
雑鬼たちは人間に対して特に危害を加えるでもなし、都中に星の数ほどひしめいている。それは宮中においても例外ではなく、内裏や大内裏にも彼らは住み着いている。宮仕えの陰陽師たちからは事実上黙認されている形だ。
なのに彰子が来てから、安倍の邸から雑鬼を追い払うように晴明は結界を敷いた。それは彼女が大事な預かりものだからだ。
時の権力者、藤原道長の。
結界の外では、鞠のような体に小さな一本角を生やした鬼と、小さな猿のような鬼、蜥蜴のような三ツ目の鬼が三匹、太陰と昌浩に手を振った。
「なあに、あんた、雑鬼たちと知り合いなの?」
「知り合いっていうか…その…」
渋い顔をして黙り込んだ昌浩の後を継いで、猿の小鬼が声を上げた。
「知り合いなんかじゃないぞ! そこの奴とは初対面だ! 名前だって知らないんだからな、なっ尾花っ」
「あっこらっ、」
「尾花?」
ますます苦虫を噛み潰したような顔をして、昌浩は額に手を当てた。その指の間からじろりと雑鬼たちを睨む。蜥蜴と一ツ角の小鬼はおろおろと顔を見合わせて、猿の小鬼にぽかりと小さな拳を振り下ろした。
「なにそれ。あんたの名前? 別に名前持ってたの?」
「……ずうっと昔に大怪我したとき、助けてくれた人間がいて」
昌浩はため息をついた。
「その人が付けてくれた名前」
「ふうん……見鬼だったの」
「そこまで強い人じゃなかったけどね」
ふと目元を和らげて、彼は黒瞳を伏せた。
「代わりに優しかった」
「………そう」
きっと昌浩は、その人間を好いていたのだろう。
何も知らない太陰でもなんとなく勘付けた。優しかったと零す、彼の声音は――あまりに穏やかだったから。
妖が、優しいと評することのできる人間――どれだけ心を砕けば、彼らがそのように表してくれるだろう。天狐は特に情に厚いという。裏返せば、厚い分彼らは頑なだ。彼らが信じるに足る器でなければ、彼らの信頼を得ることは難しいのだろう。
昌浩は雑鬼たちを指して、様々を諦めた色をした。
「こいつらとは、その時分にちょっと」
「待て尾花! こいつらとはなんだこいつらとは!」
「俺たちも名前貰ったんだぞー」
「俺が竜鬼、こいつが一ツ鬼、こっちは猿鬼。どーだいい名前だろう。褒めろ!」
「はあ?」
ぽかんとした昌浩が目を丸くする。太陰は一人、どうして雑鬼風情のこいつらが仮にも天狐に上から目線なのだろうかと自問していた。
結界から身を乗り出して、昌浩は雑鬼たちに胡乱な眼差しを向けた。
「名前って…え、誰かの式になったのか」
「ちがーう! お姫に貰ったんだお姫に。式にはなってないけど、これで俺らも格が上がったぞ! 追いつかれて悔しいか?」
「……そっか、彰子に……」
昌浩が頬を弛めた。
妖は現世に存在するものの中でも霊格が低い。一番低いのは動植物、その次に妖たち、その次は人間。もちろん最も霊格が高いのは神族を代表する神霊である。
名前を付けられるというのは個を認められるということ。個の重要性が高まれば高まるほど霊格は上がっていく。妖たちはそもそも名を持たない群であるからして、まず名を与えられるか己で霊格を高めて自力で獲得するしかない。
霊格が上がっていけば、比例して妖力も高まっていく。
昌浩は嬉しげに昔馴染みたちに笑いかけた。
「よかったな。その名前大事にしろよ」
「おうとも」
「言われなくてもな。折角お姫から貰った名前だからな」
「じゃあこれからちゃんとその名前で呼ぶことにするよ」
竜鬼、猿鬼、一ツ鬼。順繰りに言霊を込めて昌浩が彼らの名を呼んでやると、雑鬼たちが喜んでぴょんぴょんと跳ねる。その様を微笑んで眺めている昌浩の横顔に、太陰は思わず問いかけていた。
「あんたは、」
ぱちんと瞬きをして、大きな双眸が太陰に向いた。
「あんたはどう呼ばれたいの」
「――昌浩でいいよ。こっちが親から貰った名だもの」
「雑鬼たちには呼ばせてるじゃない」
「こいつらは、……今更言ったって直しゃしないもの」
「……そう」
太陰は宙を漂って、昌浩の隣に腰を下ろした。大きく息を吸う。
「夕方の続きを言うわ。昌浩。助けてくれてありがとう」
はっきりと一句一句を発音してじろりと彼を見やる。
太陰の思った通り、昌浩は顔をしかめて視線を逸らしていた。膝を抱えて、もごもごと呟く。
「あれは……だって、俺がちゃんとしてれば付かなかった傷だし」
その瞬間、ついに頭のどこかが切れる音を太陰は聞いた気がした。
(このガキ!)
心の中で盛大に罵る。もっと早くこうしていればよかった、とは思う者の――十二神将より遙かに年下のひよっこの思い上がりを今日さんざんに味わって、ようやく太陰は腹を立てる気になった。
「あんまり自惚れるんじゃないわよ、」
太陰はとうとう声を荒げて昌浩に詰め寄った。弾かれたように昌浩が顔を上げる。相手が大妖であることなどは彼女の脳裏から消え去っていた。ただひとりの人格として、昌浩に相対していた。
「天狐っていったって、所詮あんたはひとりなのよ。ひとりでできることなんてたかがしれてるの。晴明だってすごい奴だけど、ひとりじゃできないことが沢山あるわ。だから晴明は私たちと契約したの。けど、それでも全能じゃない。私たちも、」
太陰は唇を噛んだ。
「全能じゃない。……神様だってできないこととできることがある。天狐だって同じでしょう」
「――そうだね」
「そうよ」
眼下の雑鬼たちが身を寄せあって、びくびくと神将の勘気を見上げているのが見える。
夜風に二人の髪が揺れた。太陰が手を伸ばして昌浩の襟首を掴み、ぐいと引き寄せた。間近で視線を交錯させて、彼女は昌浩の黒瞳の奥底を見極めようと目を眇めた。
「だから全部守りきろうとか思ってるなら、その馬鹿げた考え今すぐ捨てなさい」
昌浩の瞼がぎゅっと閉じられる。その拳が固く握りしめられた。
たとえ見かけが幼くとも、太陰は千数百年を過ごした神族の末席だ。百余年生きただけの妖より余程経験を積んでいる。できることと、できないこと。両者の隔たりを、間にそびえ立つ壁の存在を痛いほど認識している。
これは忠告だ。
「……けどさ、」
ゆるゆると瞼が開かれる。隠されていた瞳が再び現れる。
太陰よりずっと幼いはずの妖は、強い意思を灯した双眸を見開いて、挑むかの如く彼女を睨み返した。
「やってみなくちゃ、わからないじゃないか」
「それで傷つくのが、あんた自身だとしても?」
「言っただろ。俺は形振り構っていられないんだ」
「――呆れた」
長く息を吐き出して、太陰は手を離した。両手を上げて降参する。
この子どもには、何を言ってもまるで無為らしい。
かといっていらいらが収まるわけでもなく、太陰は嫌みを口に乗せた。
「頑固なとこはまるで晴明にそっくりね。天狐って皆そうなのかしら」
「そうなのかも。血かもね」
昌浩がくすりと笑む。その笑みを横目で眺めて、太陰は膝を抱えた。
どうしても、この子どもに一言言ってやらねば気が済まなかった。
「ねえ、私たちは十二神将なの」
「……知ってるよ」
「守るのは私たちの役目なのよ。あんたに守られるのは有り難いけど、癪に障るの」
昌浩がつかの間言葉をなくして押し黙る、その隙に太陰は言うべき言葉を探した。
「あんたが皆の隣に立って守るって言うんならいいけどね」
「……そっか」
「そうよ」
つんと顎を反らし、太陰は欠け始めの月を仰いだ。まあそれはそれとして、と続ける。
「あんたの調子はどうなのよ」
「え?」
「言ってたでしょ、対価が自分とかどうとか。調子良いの?」
「ああ……うん。問題ないよ」
「そう」
ほっとして、彼女は胸を撫で下ろした。
痛みで朦朧とした思考でも、同胞と彼の会話は耳に入っていた。彼の肉体を癒す術は寿命を対価にするものなのだと。考えてみれば、昌浩は妖なのだから寿命などない。取り越し苦労だった。
ふと気づく。路地にいたはずの雑鬼たちが姿を見せない。きょろきょろと頭を巡らしていると、昌浩が言いにくそうに「ついさっき逃げてったよ」と口を開いた。
「俺たちが喧嘩するのが怖かったんじゃないかな」
「……そんなに強く神気発してないわよ、失礼な奴らね……」
じと目で闇の向こうを見通すが、欠片も妖力が感じられない。諦めて膝を抱え直し、太陰は小さな膝小僧に顎を乗せた。初夏の夜陰に流れる微風が耳を擽る。
「ねえ、もっかい言うわ」
昌浩の反論を聞く気はもうなかった。彼女はまだ大事なことを伝え終えていなかった。それを言うまでは、この場を離れる気は毛頭なかった。
「あんたが私たちを治してくれなかったら、きっと天一がその役目を負って寝込んでいたわ。あんたはそれもひっくるめて全部救ってくれたの。誇っていいことだわ。もっと胸張りなさいよ」
「……それは」
太陰はぎろりと年若い妖を睨めつけた。昌浩はうっと息を呑んで怯み、異論を唱えようとした唇を閉じた。しばしの間うんうん唸っていたが、ついに肩を落として、彼は考えた末なのだろう科白を口にした。
「どういたしまして……?」
「よろしい」
どうしても欲しかった言葉だった。この幼い、優しくて傲慢な妖にどうしても言わせたかった言葉だった。
気に入らないところは確かにあるけれども、彼の言葉はいつだって真実に満ちていた。本物であると確信できた。信じるに値する者なのだと、遠く空の向こうから風が教えていた。
風はいつだって真実を運んでくる。風将の彼女は風を通して真実を見聞きする、だからわかる。天狐は晴明の式として偽りなく戦っている。彼を大事に思っている。
晴明を朋友と仰ぐその気持ちは、十二神将と何ら変わるところがない。
だからこそ同じ地に立ってほしかった。全てを庇うような戦い方をしてほしくはなかった。
独りきりで立つのを、やめてほしかったのだ。